寅年にトラのこと
令和4年の一月も早くも過ぎ去り、二月三日節分となりました。
新年のご挨拶を述べる機会を逸してしまいましたので、事務所通信に載せた1月分の随想を転載します。
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なお、随想では毎年一月は干支にちなんだ話題を選ぶようにしています。今年は「寅」。この機会に調べてみたのですが、トラの置かれている状況はかなり深刻です。WWFジャパン(https://www.wwf.or.jp/)で今、トラを守るキャンペーン「トラに願いを」を行っています。こちらもぜひ見てみてください。
「虎と未来へ」 より
毎年、読み初めの本は何にしようか考えます。干支にちなんだものなら絵本「ちびくろさんぼ」も良いですね。お話の最後にトラがお互いのしっぽに嚙みついて木の周囲をぐるるるるる・・・と回っているうちにバターになり、そのバターで焼いたホットケーキを高く積み上げる場面の魅力は格別です。
「ちびくろさんぼ」は、インドに駐在していたヘレン・バナーマンによって1899年に初めて出版されました。このお話が作られた約百年前には、トラはインドも含めアジアの広い範囲で約10万頭いたそうですが、現在では約3千頭にまで急激に数を減らし絶滅の危機に瀕しています。
元々日本にはトラがいないので遠い外国のことのように思いがちですが、この危機には私たち日本人も大きな責任を負っています。
トラの激減の二大要因は、密猟・乱獲と森林減少です。
トラは、毛皮が観賞用として、また骨などは漢方薬の材料として求められてきました。日本もかつては世界でも最大級の市場であり取引が禁じられた後も密輸されているといいます。密輸してまで買わないよ、という人が大半だと思いますが、そんな一般的な人でもかかわっているのは、森林の減少です。この百年間でトラがすむ森が 95%失われました。
森林の減少の最大の要因となるのは、木材や紙、天然ゴム、パーム油(植物油)など日常生活に欠かせない資材を生産するための開発です。私たち日本人(日本企業)はこれらの資源や農産物を大量に東南アジア、即ちトラの生息域から調達しているのです。
これらの課題を資本主義が孕む本質的な問題として論じているのが昨年話題になった新書「人新世の『資本論』」(斎藤幸平/集英社新書)です。絶えざる成長が不可欠な資本主義社会では、中核部(先進諸国)は周辺(途上国)から資源を搾取し環境負荷を押し付けることで発展し続けてきました。しかし、グローバル化により既に搾取すべき周縁部が無くなっていること、また、地球そのものが限界に来ていることで現在の全世界的な気候変動危機が起こっていること、そしてこの危機に対処するためには今ある資本主義に基づく社会経済システムの本質的な見直しが不可欠ということを明快に論じています。
昨年は多くの識者がそれぞれの立場から「資本主義」は今後どうあるべきかを論じているのを見聞きしました。岸田首相も「新しい資本主義」を掲げているようです。まだ首相の「新しい資本主義」がいかなるものか、また具体的な政策は何かはわかりませんが興味深く注視しているところです。
「ちびくろさんぼ」は、世紀を超えて多くの子供たちに愛読されましたが一時期差別問題に絡んで絶版になりました。そのため「トラがぐるぐる回ってバターになる」というイメージが伝わらない世代があるそうです。このまま手をこまねいてトラが絶滅してしまえば「トラ」のイメージすら伝わらないという悲劇がおこってしまいます。
1年の計は元旦にありといいますが、自分自身の、また事業所の目標だけでなく広い視点で世界の課題に対してどのように向き合うかを考える機会にしたいですね。
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